麻薬と依存性

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依存って聞くとどのようなことを思い浮かべますか?

 依存にも様々な依存があります。パチンコやカジノなどのギャンブルやアルコール、タバコなどの趣向品。大麻や覚醒剤などの薬物の依存。親や恋人に依存するって言ったりもしますね。依存にも色々ありますが、今回は麻薬と依存性についてお話していきたいと思います。

 普段私は緩和ケアを中心に業務を行っているのですが、「麻薬」や「モルヒネ」って聞くと大きく抵抗を感じる方がおられます。どうしても依存や中毒という言葉が頭に浮かぶのだと思います。
結論からいうと医療用麻薬では薬物中毒や依存という状態にはなりません。

 がん患者さんが痛みのコントロールをするために、麻薬(オピオイド性鎮痛薬)を使用する際痛みの報告を躊躇する8つの要因というのががん疼痛の薬物療法ガイドラインにて示されています。

1)精神依存(「麻薬中毒」)になる
2)徐々に効果がなくなる
3)副作用が強い
4)痛みは病気の進行を示す
5)注射がこわい
6)痛みを治療しても和らげることができない
7)痛みを訴えない患者は「良い患者」であり、良い患者でいたい
8)医療者は痛みの話をすることを好まない

がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020

 様々な誤解を解くことで良い治療につながると信じてます。

依存とは

実は依存には2種類あります。

「精神依存」と「身体依存」です。
精神依存とは・・・薬物に対して抑えがたい欲求がある、症状がないにもかかわらず脅迫的に薬物を使用する、有害な影響があるにもかかわらず薬物を持続して使用する、その薬物を求めるために違法な行為を起こしてしまう状態で有るとされています。

身体依存とは・・・長期間薬物に暴露されることによって生じる生体の生理学的な適応状態である。身体依存が生じているかどうかは、薬物を中止した場合に、薬物に特徴的な離脱症候群が生じることで判断するとされています。

依存というと2つを混合して考えられがちですがこのように2つに分けられています。が、一般的に問題になる・心配になるのは「精神依存」のほうだと思います。

精神依存の仕組み

人は興奮するとドパミン(アドレナリン)が出ると言うのはよく聞く話ですよね。ドパミンが出ると人は心臓がドキドキしたり、呼吸が早まったり、散瞳したりと活発に体を動かす方向へと進みます。
側坐核という脳内場所でドパミンが増えると幸福感や満足感をもたらします。側坐核という場所でドパミンが増えすぎないように、腹側被蓋野という場所からGABA神経を介してドパミンの量を抑制的にコントロールしています。
少しむずかしいですよね。
腹側被蓋野(抑制する)→側坐核でドパミンが減る→過剰な幸福や満足感を減らす

これが通常の流れなのですが、モルヒネ(麻薬)を使用すると
モルヒネ→腹側被蓋野(抑制できない)→側坐核でドパミンが増える→過剰な幸福感や満足感→精神依存
という流れになります。

やっぱり依存するじゃん!
っていう声が聞こえてきそうですが、安心してください。痛みを伴う場合は異なる動きをします。慢性的な痛みがある場合、腹側被蓋野でβ-エンドルフィンの持続的な遊離が起こることでモルヒネに反応できないようにします。さらに、側坐核ではダイノルフィンという物質が持続的に遊離することによりドパミンが出ないようになります。
〈持続疼痛時〉
モルヒネ(反応できない)→腹側被蓋野(抑制する)→側坐核でドパミンが減る→ダイノルフィンで更にドパミンが減る精神依存の形成は抑制される
以上のように痛みがある状況では精神依存は形成されないことが分かります。
ちなみに身体依存が起こる可能性はありますが、疼痛コントロール状況下では問題になることは殆どありません。少量・短期間であれば形成されませんし、痛みが落ち着いて減量・中止する際はゆっくり減量していけば問題とはなりません。

まとめ

依存には精神依存と身体依存があります。
医療用麻薬は痛みがある状態で適切に使用すれば、依存するという状態になりません。
がん患者さんは、様々な治療する過程でたくさん不安に思うこともあるかと思います。しっかり痛み止めを使用し、コントロールできることで自分らしい生活・大切に時間を使うことができると思いますので不安に感じてる方の一助になれば嬉しいです。

それでは

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